毎年春は、入社や退社、人事異動の季節です。
新しく社員を迎えたり、逆にこれまで一緒に頑張ってくれたメンバーを送りだしたり、ということもあるでしょう。いずれにしても、税金や社会保険の手続きはしっかり済ませなくてはいけません。人事の行う業務のなかでも特に手続きが多くなりやすいため、担当者には負担の多い仕事です。

今回の記事では、確実に手続きを済ませられるよう、一般的に必要となる手続きについてわかりやすくご紹介します。時間ロスを減らし、ミスなく入退社日を迎えるために、人事担当の方はぜひ一度目を通してみてください。

1.入社時に必要なこと

1.入社時に必要な手続き

まずは入社時に必要な手続きについてご紹介します。

入社時の手続きとして挙げられるのは

・労働条件の明示
・健康保険・厚生年金保険の手続き
・雇用保険の手続き
・所得税の手続き
・住民税の手続き

の5つです。

1-1.労働条件の明示

正社員、契約社員、アルバイト・パートなどの雇用形態を問わず、従業員を新たに雇用する場合は、労働基準法で定められた以下の事項を書面にて明示し、従業員に渡さなくてはいけません。

・労働契約の期間(無期契約か有期契約か)
・就業場所
・従事する業務
・労働時間(始業および就業の時刻、残業の有無、休憩時間、休日・休暇の規定など)
・給料に関連する事項(計算、支払方法、支払日など)
・退職手続き(退職金の有無、通知の期日など)

なお、従業員に渡す書面自体には、決まった様式があるわけではありません。
書面の名前自体も、会社によって「雇用契約書」「労働条件通知書」とまちまちです。
会社の実態に合わせて決めて構いませんが

・従業員に必ず渡す
・法律で定められた必要事項を盛り込む

の2点だけは絶対に守りましょう。一度書面のテンプレートを作り、社会保険労務士などの専門家にチェックしてもらうのをおすすめします。

1-2.健康保険・厚生年金保険の手続き

人間、いつ病気やケガをするかわかりません。保険証がなくても治療を受けることはできますが、後日精算するにしても一度従業員が立て替えなくてはいけません。この場合は不要に時間や手間を割くことになります。

そういった事情を踏まえると、新入社員の健康保険・厚生年金保険への加入手続きを早期に行い、保険証を交付することが大切になります。

手続としては、まず日本年金機構の事務センターに「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」を提出します。
◇リンク先:「全国の事務センター一覧(健康保険・厚生年金保険の適用に関する届書等を郵送される場合)」
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/todokesho/20150216.html

従業員を雇用してから5日以内に行いましょう。
6日以降でも手続き自体はできますが、保険証の交付が遅れることも考えられます。

保険証が届くまでの間に何らかの事情で医療機関を受診する際は、健康保険被保険者資格証明書を発行してもらうことで、保険証を利用した時と同じように、医療費の負担を抑えることができます。
◇リンク先:「従業員に健康保険被保険者資格証明書を交付するときの手続き」
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/hihokensha2/20131113.html

健康保険・厚生年金保険は「週にどのくらい働くか」によって、加入義務が生じるかが決まります。フルタイム勤務の正社員・契約社員は、基本的に加入する義務があると思っておきましょう。アルバイト・パートについては、1週間および1カ月の所定労働日数がフルタイムの人の4分の3以上であれば、加入しなくてはいけません。

また、従業員数が501人以上の企業の場合は、週20時間以上働く人であれば、健康保険・厚生年金保険に加入することが可能です。

1-3.雇用保険の手続き

雇用保険とは、公的保険制度の1つです。通称である「失業保険」の方が有名かもしれません。雇用保険に加入しておくことで、会社を自分の意志で退職したり、会社の経営が傾いて辞めざるを得なくなったりした場合、一定の条件を満たすことで失業手当(基本手当)を受け取ることができます。

管轄するハローワークに、「雇用保険被保険者資格取得届」を、社員を雇った月の翌月10日までに提出し、手続きを進めましょう。期限が過ぎた場合も手続きができないわけではありません。しかし追加での書類提出を求められることがあるため、注意が必要です。

また、雇用保険は、フルタイムの従業員はもちろん、1週間の所定労働時間が20時間以上あるパート・アルバイトの従業員についても、加入義務が生じます。加入義務があるにも関わらず、加入手続きを怠った場合、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金を課されるおそれがあるので気を付けてください。

1-4.所得税の手続き

会社で働いて得た給料には、所得税がかかります。そして、会社勤めをして給料をもらっている人(給与所得者)の場合、所得税は給料からの天引き(源泉所得税)で払うのが基本です。そのための手続きも、入社時に行いましょう。

手続ですが、従業員に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を書いてもらい、あとで回収すれば大丈夫です。この書類自体は税務署に提出せず、会社内で保管しておけば問題ありません。税務調査などで税務署から扶養控除等申告書と保険料控除申告書を見せるように指示があった場合は、その指示に従わなければなりません。

すぐに取り出せるようにファイリングし、所定の場所においておくといいでしょう。

1-5.住民税の手続き

会社勤めをして給料をもらっている人の場合、住民税は給料からの天引き(特別徴収)を行うのが主流です。
の従業員の住民票がある自治体に「給与所得者移動届出書」を 入社月の翌月10日までに提出してください。提出することで「その年度については、自社において給料天引きに切り替える」「翌年度についても自社の給料から天引きする」ことが、自治体に伝わります。

ただし、入社時期が1~5月の場合、その年の住民税については原則として、給料天引きにはできません。住民税を自分で納める(普通徴収)の場合、最終の納期限は毎年1月に設定されています。

そのため、毎年1~5月に入社時期を迎える転職者については、このことと釣り合いを取るため、最後の給与やボーナスから一括して残額を徴収するという実務的な扱いがなされています。

2.入社時、従業員から提出してもらう書類チェックリスト

ここまでの内容を踏まえ、入社時に従業員から提出してもらう書類について以下にまとめました。
一旦目を通しておきましょう。

マイナンバーが確認できる書類 次の3つのうち一点

写真付個人番号カード(マイナンバーカード)
個人番号通知カード+写真付身分証明書
マイナンバー入住民票+写真付身分証明書

雇用保険被保険者番号が確認できる書類 次の2つのうち一点

雇用保険被保険者証
前職の雇用保険資格喪失確認通知書(または離職票)

扶養控除申告書 副業の場合は不要
給与振込先口座が確認できる書類 通帳のコピー、キャッシュカードなど
本人の現住所が確認できる書類 住民票・運転免許証など
前職の源泉徴収票 年末調整の時に改めて提出してもらうのも可能
前職での住民税の異動届出書 前職からの給与天引きを引き継ぐ場合に使用すること

 

2.退社時に必要なこと

1.退社時に必要な手続き

退職時の手続きとして必要なもの

・健康保険・厚生年金保険の資格喪失手続き
・雇用保険の手続き
・源泉所得税・年末調整の手続き
・住民税の手続き
・退職金からの控除計算

(1)健康保険・厚生年金保険の資格喪失手続き

従業員が退職した場合、最初にやるべきなのは健康保険・厚生年金保険の資格喪失手続きです。退職者の保険証(被扶養者がいる場合は被扶養者が使っていたものも)は忘れずに回収してください。

また、 日本年金機構の事務センターや各地の年金事務所窓口に、回収した保険証と「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を提出しましょう。この手続きは、退職した日から5日以内に済ませてください。

保険料の給与天引きにも注意が必要です。健康保険・厚生年金保険の保険料には「資格喪失月の前月分までを、翌月末までに納付する」という決まりがあります。資格喪失の日は退職日の翌日なので、月末に退職した場合は特に注意が必要です。

例えば、1月31日に退職した場合は、翌日にあたる2月1日が資格喪失日にあたります。そのため、1月分の社会保険料を、2月末日までに納付しなくてはいけません。一方、1月15日に退職した場合は、1月16日が資格喪失日にあたるため、12月までの社会保険料を1月末までに納めれば大丈夫です。

(2)雇用保険の手続き

雇用保険については、 退職の翌日から10日以内に、「雇用保険被保険者資格喪失届」という書類をハローワークに提出しましょう。

また、退職者が希望した場合は「離職証明書」を交付しなくてはいけません。俗にいう離職票のことです。退職者が退職後すぐに就職せず、失業給付を受け取る予定である場合は、離職票がないと手続きが進められません。

この離職票は記載事項が多いため、作成に時間がかかります。あらかじめ離職票の交付を希望するかを聞いた上で、対応しましょう。

(3)源泉所得税・年末調整の手続き

会社には、その年の1月1日から退職するまでに支払った給与の金額などを記載した源泉徴収票を交付する義務があります。最後の給与明細と合わせて渡すことがほとんどです。

また、年末調整は本来「その年の12月31日に在籍している人」を対象とした手続きです。そのため、基本的には退職者に対して年末調整の手続きを行う必要はありません。

ただし、例外として、以下のいずれかに当てはまる場合は退職時に年末調整の手続きを行わないといけないので、注意しましょう。

・12月に給料の支払いを受けた後に退職した
・著しい心身の障害のために退職した(再就職できないほどケガや病気が重い)
・死亡により退職した(在職中に亡くなった)

(4)住民税の手続き

住民税の天引き(特別徴収)を行っていた場合は、 退職者が住民票を有する自治体に「給与所得者移動届出書」を 退職月の翌月10日までに提出しなくてはいけません。

ただし、退職者が「家族の転勤についていく」「実家の近隣で暮らす」など、退職の時点でどこに引っ越すのか明らかな場合は、引っ越し前の自治体と引っ越し後の自治体に「給与所得者移動届出書」を提出しましょう。

(5)退職金からの控除計算

会社によっては、退職者に対して退職金としてまとまった金額を支払うこともあります。この場合も、金額によっては所得税や住民税を天引きしなくてはいけません。計算方法がかなり複雑なので、顧問税理士と話し合い、適切に処理を進めましょう。

なお、 天引きした所得税や住民税は、原則として退職金を支払った月の翌月10日までに、税務署や各自治体に納付する決まりです。

2.退社時、従業員から提出してもらう書類チェックリスト

退社時に従業員から提出してもらう書類を以下にまとめました。入社時に比べて少ないですが、一度確認しておきましょう。

保険証 被扶養者(配偶者、子)の保険証も合わせて提出させる
退職届 転職など、自己都合退職の場合に必要

さいごに

今回の記事では、総務・人事担当者が知っておきたい従業員の入退社時の手続きについて、詳しくまとめました。入退社に伴う人事の業務は数が多いため、負担のかかる仕事です。担当者の方はぜひ今回ご紹介した手続きのポイントを押さえ、春の業務にしっかり備えていきましょう。

 

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