経理や総務の業務では様々な書類を取り扱うことになります。使わなくなった書類であっても、すぐに破棄しないよう注意が必要です。それぞれに決められた保存期間があるため、少なくともその間は社内もしくは外部の倉庫などに保存しておかなければいけません。そのほかにも、書類ごとで様々なルールが存在します。
今回の記事では、経理と労務関連の各種書類の保存期間について詳しく解説しています。これから経理の業務を担当するという方も、基本的なルールを知っておきたいという方も、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
1.経理関係の書類の保存期間
経理関係の書類を大きく分けると
・税法の規定により作成するもの
・会社法の規定により作成するもの
に分かれます。
根拠となる法律によって、作る書類と保存期間が異なるため、注意しましょう。
1.税法の規定により作成するもの
所得税法、法人税法などの法律の規定により作成する書類の保存期間は7年です。ただし、一部の書類は5年と短縮されています。具体的には以下の書類が該当します。
1-1.所得税法の規定に基づくもの
保存期間が7年のもの | 【帳簿】 総勘定元帳・仕訳帳・現金出納帳・売掛帳・買掛帳・固定資産台帳・経費帳簿等【決算書類】 青色申告決算書(貸借対照表・損益計算書)・棚卸表等【現金や預金の入出金の証拠となるもの】 領収書・預貯金通帳・請求書等 |
保存期間が5年のもの | 【取引の過程でやり取りした書類】 請求書の控え・見積書・契約書・納品書控え・注文書等 |
1-2.法人税法の規定に基づくもの
保存期間が7年のもの | 【帳簿】 総勘定元帳・仕訳帳・現金出納帳・売掛金元帳・買掛金元帳・固定資産台帳・売上帳・仕入帳 など【書類】 棚卸表・貸借対照表・損益計算書・注文書・契約書・領収書など |
1-3.保存方法
これらの書類は紙で保存するのが基本です。
仮にパソコンで作った書類であったとしても、原則としてプリントアウトして保存しなくてはいけません。ただし、法人の場合は、紙による保存以外の方法も認められています。
わかりやすくするために、表にまとめました。
マイクロフィルムによる保存方法 | 保存期間の最後の2年間に当たる6年目および7年目の帳簿書類(一定の書類については最後の4年間)は、一定の要件を満たすマイクロフィルム(COM)による保存が可能。 |
電磁的記録による保存方法 | パソコンによる経理を行っている場合で、一定の条件を満たす場合はサーバー・DVD・CD等に電子的に記録しそのまま保存することが可能。ただし、備付けを開始する日の3カ月前までに所轄の税務署長に対し申請書を提出する必要がある。 |
スキャナー読み取りの電磁的記録による保存 | 一部の書類を除く書類について、スキャナーによる保存を行うことが可能。ただし、備付けを開始する日の3カ月前までに所轄の税務署長に対し申請書を提出する必要がある。 |
電子計算機出力マイクロフィルムによる保存 | パソコンで作成する帳簿書類については、一定の条件のもとで、マイクロフィルムによる保存が可能。ただし、備付けを開始する日の3カ月前までに所轄の税務署長に対し申請書を提出する必要がある。 |
表中でも触れましたが、紙に出力する以外の方法で保存する場合は、事前に所轄の税務署に対し申請書を提出しなくてはいけません。また、具体的な方法についても細かい規定があります。事前に税理士に相談し、社内で採用できる方法かを考えてから、切替対応を進めていくといいでしょう。
2.会社法上の規定も適用されるものは10年
また、経理関連の書類であっても、貸借対照表など会社法上の規定も適用されるものは、保存期間が10年と定められています。税法上の7年よりも長いため、誤って捨ててしまわないようにしましょう。具体的には以下のものが該当します。
保存期間が10年のもの | 【帳簿】 貸借対照表・損益計算書・営業報告書・利益処分案・付属明細書・監査報告署 総勘定元帳・各種補助簿・株式割当簿・株式台帳・株主名義書換簿・配当簿・印鑑簿 倉庫証券簿・判取帳など【書類】 営業に関する重要書類 |
2.労務関係の書類の保存期間
会計関係の書類と同じく、労務関係の書類についても保存期間が決まっています。
1.労働基準法関係
労働基準法109条において、企業が保存すべき書類の範囲が定められています。
労働基準法
第百九条 使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年間保存しなければならない。 |
なお、具体的には以下の書類が該当します。
確認しておきましょう。
労働者名簿 | 労働者の氏名や採用日など事業場が雇用している労働者の情報を記した書類 |
賃金台帳 | 使用者に作成が義務付けられている法定帳簿で、給与支払に関する情報を記録するためのもの |
雇入れに関する書類 | 雇入決定関係書類・契約書、労働条件通知書・履歴書・身元引受書など |
解雇に関する書類 | 解雇決定関係書類・解雇予告除外認定関係書類・予告手当または退職手当の領収書など |
災害補償に関する書類 | 診断書、補償の支払、領収関係書類など |
賃金に関する書類 | 賃金決定関係書類、昇給・減給関係書類など |
その他労働関係に関する書類 | 出勤簿・タイムカード等の記録・労使協定の協定書・各種許認可書・始業・終業時刻など労働時間の記録に関する書類(使用者自ら始業・終業時間を記録したもの、残業命令書及びその報告書並びに労働者が自ら労働時間を記録した報告書)・退職関係書類・休職出向関係書類・事業内貯蓄金関係書類など |
また、従来これらの書類の保存期間は3年と定められていました。
しかし、2020年4月1日から改正労働基準法が施行され、保存期間は5年に延長されます。ただし、経過措置として当分の間は3年が適用されることになっています。保存期間に関してはは、社会保険労務士や弁護士などの専門家とも相談し、保存期間をどうすべきかの確認をしておきましょう。
2.労働安全衛生法に関する書類
労働安全衛生法に関する書類は、健康診断に関する書類とそれ以外の書類に大別されます。
特に重要なのが、一般健康診断個人票と安全衛生委員会の議事録です。
前者は5年、後者は3年の保存義務があります。そのほかの書類についても、チェックしておきましょう。
保存期間が5年のもの | 一般健康診断個人票 |
保存期間が3年のもの | 安全委員会等の議事録・救護に関する訓練の記録・特別教育の記録・機械等の定期自主検査・避難等の訓練の記録・騒音の測定等の記録 |
3.健康保険関連の書類
健康保険に関する書類、厚生年金保険に関する書類については、法律で完結した日を起算日として2年間保存することが義務付けられています。なお、完結した日とは、労働者が退職・死亡するなどの理由で、加入資格を喪失した日と考えましょう。
3.保存期間以外に気をつけるべきことは?
書類の保存期間を守ることは、非常に大事です。
同時にどう保存するかも知っておく必要があります。「適切な方法で保存できること」「保存した書類をすぐに取り出せるようにしておくこと」の2点を意識しておきましょう。
1.保存の仕方を統一しよう
「この書類、ちゃんとしまっておいて」と言われても、人によって「ちゃんと」の解釈は様々です。
・どんな大きさの紙に印刷するのか
・穴をあけるタイプのファイルに保存するのか、だとしたらどこに穴をあけるのか
・バックアップはどこにとっておくのか
など、保存の仕方に関する認識をすり合わせておかないと、部署間・社員間でのミスコミュニケーションにも繋がります。スムーズに意思疎通ができるよう、保存の仕方はあらかじめ社内で共有しておきましょう。
・マニュアルを作る
・サンプルを作り、すぐに閲覧できるようにしておく
など、誰がやってもうまくいく体制を作る方が効率的です。
1-1.スペースが足りなければ倉庫の検討も
また、今回の記事で紹介した書類は、紙ベースで保存するのが基本です。そのため、事務所や社屋が狭い場合には、保存するスペースが確保できないおそれも出てきます。そういった場合は外部の倉庫を利用するなどして、保存スペースを確保しておくようにしましょう。
4.どこに何があるのかを共有する
誰がやってもうまくいくようにするには、どこに何があるのかを共有しておくことが大事です。通常は担当者が業務を離れたり、退社したりするときは、引継ぎを行うのが一般的です。しかし体調不良や、やむを得ぬ事情で突然休職や退職になることも考えられます。
コロナ禍において社内業務の変更を余儀なくされたり、そもそも会社に出社できないというケースも多く出ています。こういった場合に備えて、会社の業務をストップさせない体制づくりが欠かせません。
・「どこに何があるか」という一覧表を作る
・一覧表がどこにあるのか(紙に出力しているか、データで保管しているか)を周知する
・社員の急病、災害に備えた対応マニュアルを作る
・対応マニュアル、一覧表は定期的に見直し、その時の状況に合ったものにアップデートする
などの対応も併せて行うようにしましょう。
さいごに.ルールを知って正しく保管・管理しよう
今回は、経理・労務関連書類の各種保存期間について詳しくご紹介しました。多種多様な書類を取り扱うなかで、書類毎の適切な保存期間を知っておくことはとても大切です。使わなくなった書類でも一定期間は保存しておくことが必要になります。
それぞれの書類の保存ルールを確認し、社内で保管場所や保管方法を共有をしておくことも大切です。。この記事を参考にして、ぜひこれからの業務に役立ててください。
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