「そもそも営業BPOって何?」

「営業代行やアウトソーシングと何が違うの?」

と疑問を感じている方も多いのではないでしょうか。

営業BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)は、営業活動の一部だけではなく、プロセス全体を外部に委託して最適化を図る仕組みです。

ただ、その特徴やメリット、注意点まで正しく理解できているケースはまだ少ないかもしれません。

この記事では、営業BPOの基本から、委託できる業務範囲、導入効果、注意すべきリスク、選び方の基準まで、初めて検討する方にもわかりやすく解説します。

営業リソースに課題を感じている方は、ぜひ参考にしてみてください。

営業BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)とは?

営業BPO(Business Process Outsourcing)とは、企業の営業プロセス全体を、外部の専門組織に包括的に委託するアウトソーシング手法です。

個別の営業活動を切り出すのではなく、企画段階から実行・改善までを一貫して支援する点が大きな特徴です。

もともとBPOは、人事・総務・経理などのバックオフィス業務を対象に広がってきましたが、近年は営業領域にも応用されるようになりました。

コールセンター業務にとどまらず、営業戦略設計など上流工程を含む領域にまで広がっています。

営業BPOは、単なる作業の外注ではありません。

営業活動そのものを最適化し、企業の競争力を高めるための戦略的な取り組みといえます。

営業BPOが広まっている背景

営業BPOが注目を集めている背景には、企業を取り巻く環境変化が大きく影響しています。

特に、営業活動に対する外部リソース活用のニーズは、以下のような要因によって高まっています。

  • 労働力不足による営業人材の確保難
  • DX(デジタルトランスフォーメーション)推進による営業スタイルの変化
  • VUCA時代における営業環境の不確実性・複雑化

上記のような要因により、従来型の営業組織だけでは十分な成果を上げることが難しい状況が生まれています。

限られたリソースで効率的に営業活動を展開するには、高度な専門スキルや柔軟な対応力が欠かせません。

しかし、それらを社内で一から整備・強化するには時間もコストもかかります。

こうした環境の変化に対応するために、営業プロセスの一部または全体を専門の外部組織に委託し、組織力を補完する「営業BPO」の導入が広がりを見せています。

営業代行・営業アウトソーシングとの違い

営業活動を外部に委託する手法には、「営業代行」「営業アウトソーシング」「営業BPO」の3つがあります。

それぞれ似ているように見えますが、委託範囲や役割に明確な違いがあります。

営業代行は、アポイント獲得や商談など、特定の営業活動のみを外部に任せるスタイルです。

一方、営業アウトソーシングは、既存顧客対応や新規開拓といった、営業業務全体を包括的に委託する形態を指します。

これに対して営業BPOは、単なる営業活動の代行にとどまらず、営業プロセス全体の最適化を支援します。

戦略設計、ターゲティング、KPI設計といった企画段階から運用・改善までを一貫して担う点が大きな特徴です。

3つの違いを整理すると、以下のとおりです。

種類 委託範囲 委託単位
営業代行 特定の営業活動(例:アポ獲得、訪問) 活動単位
営業アウトソーシング 営業業務全般(例:新規開拓、顧客管理) 業務単位
営業BPO 営業プロセス全体(例:戦略設計〜運用改善) プロセス単位

営業代行・営業アウトソーシング・営業BPOは、それぞれ異なる強みを持っています。

どれが優れているかではなく、自社の課題や目的に合わせて、最適な手段を選ぶことが重要です。

それぞれに向いている企業の特徴

営業代行、営業アウトソーシング、営業BPOは、それぞれ特性が異なるため、向いている企業の条件も変わってきます。

自社の営業課題や求める支援範囲に応じて、選ぶ必要があります。

具体的には、次のような特徴に応じて検討すると良いでしょう。

営業代行 ・短期的にアポイント数を増やしたい

・特定のターゲット層へのアプローチを強化したい

営業アウトソーシング ・営業活動の幅広い業務を外部に任せたい

・社内リソース不足を補いたい

営業BPO ・営業戦略の立案から運用まで一貫支援を受けたい

・営業プロセス全体を改善・最適化したい

それぞれの特徴に応じて適切な手法を選択すれば、営業活動の効率化や成果向上につなげることができます。

上記ポイントを参考に、自社にあった会社を選びましょう。

営業BPOで委託できる業務

営業BPOは、単なる作業代行ではなく、営業プロセス全体を支援する点に特徴があります。

では、実際にどのような業務を委託できるのでしょうか。

ここでは、営業BPOで支援を受けられる主な業務領域を確認していきましょう。

インサイドセールス

インサイドセールスとは、訪問営業を行わず、電話やメール、オンラインツールを使って見込み顧客と接点を持つ営業活動を指します。

営業BPOでは、このインサイドセールス領域を委託し、効率的なリード育成やアポイント獲得を支援できます。

  • 見込み顧客リストへのアプローチ・ヒアリング
  • ニーズ喚起や情報提供によるリード育成
  • CRMを活用した顧客情報の管理・更新
  • 商談化タイミングの見極めとアポイント調整
  • フィールドセールス部門への案件引き継ぎ

インサイドセールス業務を外部委託すれば、社内営業リソースを商談・クロージングといったコア業務に集中させることができ、営業活動全体の生産性向上が期待できます。

営業戦略設計

営業戦略設計とは、ターゲットの設定やKPIの設計を行い、営業活動全体の方向性を明確にするプロセスを指します。

営業BPOでは、営業戦略設計領域も委託でき、営業活動の標準化や成果向上の支援が可能です。

具体的な支援内容には、次のようなものが含まれます。

  • ターゲット市場・顧客層の選定
  • 営業プロセス設計と業務フローの整備
  • KPI(重要業績評価指標)の設計
  • 営業資料・トークスクリプトの作成
  • 効果測定と改善提案

営業戦略の設計が明確であれば、現場の営業活動も迷わず進めることができます。

結果として、組織全体で一貫した営業アプローチを取れるようになります。

フィールドセールス支援

フィールドセールスとは、対面訪問を通じて顧客と商談を行い、受注につなげる営業活動を指します。

営業BPOでは、こうしたフィールドセールスに関連する業務支援も委託でき、営業現場の負担軽減と効率化を図ることが可能です。

具体的な支援内容には、以下のようなものがあります。

  • CRMを活用した商談管理・顧客情報更新
  • 商談記録の整理・レポーティング
  • 営業課題の抽出と改善提案
  • クロージング支援や提案資料作成のサポート
  • アップセル・クロスセル機会の発掘

フィールドセールス支援を活用できれば、営業担当者は訪問活動に専念でき、より高い成約率を目指した動きがとりやすくなります。

マーケティング連携

営業BPOでは、営業活動単体の支援にとどまらず、マーケティング部門との連携強化も支援対象となるケースがあります。

マーケティングと営業の連携を高めることで、見込み顧客の創出から商談化までのプロセスを一貫してサポートしてもらえます。

具体的な支援内容には、以下のようなものがあります。

  • マーケティング施策から得たリード情報の営業部門への共有・連携
  • インサイドセールスによるリードナーチャリングの強化
  • 商談化率を高めるためのデータ分析とフィードバック
  • マーケティングコンテンツ(資料・ホワイトペーパーなど)の活用提案
  • リード育成プロセスの設計支援

営業BPOを活用してマーケティングと営業を連携させることで、部門間の連携ミスを減らし、より質の高い商談創出へとつなげることが可能になります。

営業BPO導入によって期待できる効果

営業リソースの不足、営業活動の効率化ニーズ、競争環境が変化する中で、営業BPOは単なる業務委託にとどまらず、営業組織の強化につながる手段として注目されています。

ここでは、営業BPOを導入により具体的にどのような効果が期待できるのかを確認していきましょう。

限られたリソースをコア業務に集中できる

営業BPOを導入すれば、限られた人員や時間を、本当に成果につながるコア業務に集中させることができます。

営業部門では、リスト作成やアポイント調整、CRM入力作業など、直接売上に結びつかないノンコア業務に多くの時間が割かれてしまいがちです。

そのため、商談やクロージングといった重要な場面にリソースを十分投入できず、成約機会を逃してしまうリスクも高まります。

例えば、インサイドセールスやリード育成業務を営業BPOに委託すれば、自社営業担当者は商談や契約締結といった収益直結型の活動に専念できるようになります。

限られたリソースを最大限に活かし、営業活動の成果を引き上げるうえで、営業BPOは有力な選択肢となるでしょう。

専門スキルを持つ外部リソースを活用できる

営業BPOを導入すれば、社内に不足している専門的なスキルや知見を、即戦力として取り入れることができます。

近年の営業活動では、CRMツールの運用やデータ分析による戦略立案など、従来型の営業スキルだけでは対応しきれない領域が増えています。

しかし、高度なスキルを持つ人材を自社で採用・育成するには、時間もコストも大きな負担となるのが実情です。

例えば、営業BPOを活用すれば、CRMデータの分析に基づくターゲットリスト作成や、リードスコアリング設計など、専門性の高い業務を外部のプロフェッショナルに任せることが可能です。

その結果、営業活動全体の精度向上や、成約率の底上げが期待できます。

営業BPOによって専門スキルを柔軟に活用すれば、限られた社内リソースを補完しながら、営業力強化を図る有効な手段となります。

コストが削減できる

営業BPOを導入すれば、自社で営業人材を一から採用・育成するためにかかるコストを大幅に抑えることができます。

営業人材の確保には、採用活動そのものに加えて、入社後の研修やOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)に多大な時間と費用が必要です。

営業スキルが定着するまでには一定の期間を要し、即戦力化までにコスト負担があるのも事実です。

例えば、営業BPOを活用すれば、既にトレーニングされた外部の専門チームが営業プロセスを支援するため、初期教育コストを抑えつつ、立ち上がりの早い営業体制を構築できます。

成果に応じた柔軟な契約設計も可能なため、固定費化を防ぎながらの運用もできるでしょう。

営業BPO導入時に注意すべきポイント

営業BPOは多くのメリットをもたらしますが、導入すれば必ず成果が出るとは限りません。

成果を最大化するためには、事前にリスクや課題を把握し、適切に対策を講じることが大切です。

ここでは、営業BPOを導入する際に特に注意しておきたいポイントを整理していきます。

ノウハウの蓄積不足

営業BPOを導入する際は、外部に任せきりになるため、自社内に営業ノウハウが蓄積されにくくなるリスクに注意が必要です。

外部リソースに依存しすぎると、営業活動のプロセスや改善ポイントがブラックボックス化し、自社に知見が残らないまま運用だけが進んでしまうケースがあるからです。

いざBPOを縮小・終了する際に、自社の営業体制に大きな空白が生まれてしまう危険性もあります。

ノウハウ蓄積が進まない典型的なケースには、以下のような状況が挙げられます。

  • 営業活動の進捗状況や結果報告が簡易的で、具体的なデータが共有されない
  • 成果だけに注目し、どのプロセスが成功・失敗に影響したかが見えない
  • 定期的な振り返りや改善提案がなく、PDCAサイクルが回らない

リスクを回避するためには、営業BPOと緊密に情報共有を行い、定期的に振り返りやナレッジの蓄積ができる機会を設けましょう。

情報漏洩リスク

営業BPOを導入する際は、顧客情報や営業戦略などの重要データを外部に共有する以上、情報漏洩リスクに十分注意しなければなりません。

営業活動では、見込み顧客リストや取引先情報、商談内容など、企業にとって極めて重要な情報を日常的に取り扱います。

さまざま情報が委託先経由で漏洩してしまうと、信用失墜や損害賠償リスクなど、大きな経営リスクにつながりかねません。

特にリスクが発生しやすい場面や注意点は、以下のようなケースが考えられます。

  • 情報管理体制が不十分なBPO事業者を選定してしまう
  • 業務委託範囲や守秘義務に関して契約で明確に定めていない
  • セキュリティ認証(例:ISMS認証)取得状況を事前に確認していない

情報リスクを防ぐためには、契約締結前に情報管理体制や認証取得状況を必ずチェックし、守秘義務契約(NDA)を適切に締結するなどの対策を講じておきましょう。

明確なKPI設定

営業BPOを成功させるためには、最初に成果指標となるKPI(重要業績評価指標)を明確に設定しておく必要があります。

目標や期待する成果が曖昧なまま委託を開始してしまうと、BPO側との認識ズレが生じたり、最終的な成果評価が難しくなったりするリスクがあります。

KPIを明確に定義していない状態では、プロジェクト進行中に方向性がブレる恐れもあり、想定していた効果が得られない可能性もあるため注意しましょう。

例えば、営業BPOにおいて設定されることが多いKPIには、以下のようなものがあります。

  • 月間アポイント獲得数
  • 商談化率(アポイントから商談への移行率)
  • 新規顧客リード数
  • フォローコール実施件数
  • 既存顧客からの追加受注件数

具体的なKPIをあらかじめ設定し、達成基準をBPO事業者と共有すれば、効果的な運用が期待できるでしょう。

営業BPOを選ぶ際に重視すべき基準

営業BPOを導入する際は、単に費用や規模だけで選ぶのではなく、自社の課題や目標にあった支援ができる事業者を見極めることが大切です。

ここでは、営業BPO会社を選定するうえで特に重視したい基準を解説していきます。

実績・業界知識

営業BPO事業者を選定する際は、これまでの実績と対象業界に関する知識の有無を確認しましょう。

業界ごとに営業スタイルやターゲット像、商談プロセスには独自の特徴があるからです。

業界特有の構造や商習慣を十分に理解していない事業者に委託してしまうと、的外れなアプローチになったり、成果につながらないリスクが高まります。

具体的に確認しておきたいポイントには、以下のようなものがあります。

  • 類似業界での営業支援実績があるか
  • 目標達成までのプロセス設計に業界知識が反映されているか
  • 業界特有の商習慣やターゲット層への理解があるか

自社の業界に関する理解と実績を持つ事業者を選ぶことで、営業BPOの効果を最大限に引き出すことが期待できます。

提案力・柔軟性

営業BPO事業者を選定する際は、単に決められた業務をこなすだけではなく、課題に応じた改善提案ができる「提案力」と、変化に柔軟に対応できる「柔軟性」を備えているかを確認しましょう。

営業環境は、市場動向や顧客ニーズによって絶えず変化します。

当初の想定どおりにプロジェクトが進まないことも珍しくありません。

こうした状況に対応するには、与えられた業務をこなすだけではなく、課題を先回りして捉え、改善策を提案できる力が求められます。

  • 具体的に確認しておきたいポイントには、以下のようなものがあります。
  • 想定外の課題発生時に、柔軟な対応プランを提示できるか
  • 目標未達リスクに対して、早期に改善提案を行ってきた実績があるか

業務開始後も、成果向上に向けた追加提案や施策見直しを提案できる体制か

提案力と柔軟性を備えた事業者を選ぶことで、営業活動を継続的にブラッシュアップしながら成果につなげることができるでしょう。

運用体制・コミュニケーションの質

営業BPO事業者を選定する際は、業務遂行能力だけではなく、運用体制の整備状況とコミュニケーションの質を確認しましょう。

BPO導入後は、日々の情報共有や業務進捗の確認、課題発生時の対応など、継続的な連携が求められます。

運用体制が不十分だったり、連絡が滞ったりすると、齟齬が生まれやすくなり、成果の低下や信頼関係の悪化を招きかねません。

特に確認しておきたい運用・コミュニケーション面のポイントには、以下のようなものがあります。

  • 定例ミーティングやレポーティングの実施頻度・内容
  • 専任担当者の有無と、緊急時の連絡体制
  • 業務進捗や課題発生時の迅速な報告・共有プロセス

運用体制とコミュニケーションの質が高い事業者を選ぶことで、スムーズな連携が実現し、営業BPOの成果を最大限に引き出すことができます。

まとめ|営業BPOの導入で、営業活動の効率化と成果向上を実現しよう

営業BPOは、営業代行やアウトソーシングとは異なり、営業プロセス全体を最適化する取り組みです。

本記事では、その特徴や委託できる業務内容、導入による効果、注意すべきリスク、適切な事業者選びの基準に関して具体的に整理してきました。

営業BPOをうまく活用すれば、リソース不足や営業力強化といった経営課題に対応しながら、成果を生み出す体制づくりが可能になります。

自社の目的に沿った形で、営業BPOの導入を前向きに検討してみてはいかがでしょうか。

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