事業を営んでいると、日々、いろいろな出費が発生します。しかし、そのすべてが経費として落とせるわけではありません。経費のルールを知らずに処理してしまうと、あとになって大変な目に遭います。

今回の記事は、事業を営む上で発生する費用について、

・経費で落とせるかどうかの判断ポイント
・経費で落とせるもの・落とせないものの具体例

という2つの視点でくわしく解説します。経費で落とせる出費とそうでない出費の違いを理解して、今後の経費計上に役立ててください。

 

1.経費で落とせるかどうかの判断ポイント

最初に、経費で落とせるかどうかの判断ポイントとして

1.経費として認められる範囲の支出か
2.領収書に信ぴょう性があるか

の2つについて解説します。

 

1.経費として認められる範囲の支出か

国税庁は、必要経費として扱える支出を、以下のように定義づけています。

・総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額
・その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額

出典:No.2210やさしい必要経費の知識|所得税|国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2210.htm

 

なお、経費として落とすためには、算入時期についても知っておく必要があります。必要経費となる金額は、その年において債務の確定した金額です。つまり、次の3つの条件をすべて満たす支出があれば、たとえ実際には支払っていなかったとしても、経費として扱われます。

・その年の12月31日までに債務が成立していること
(注文や契約が確定している)
・その年の12月31日までにその債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること
(物品やサービスの提供を受けている)
・その年の12月31日までに金額が合理的に算定できること
(物品やサービスの金額が確定している)

 

例えば、以下のケースでは、たとえ領収書が当年の支出であったとしても、経費として落とせるのは翌年となります。

・業務で利用する予定のパソコンを2020年12月26日にオンラインショッピングで購入した。領収書は同日付であったが、実際にオフィスに届いたのは2021年1月6日だった。
・2021年1月10日に出発する予定の出張に利用するための新幹線のチケットを、2020年12月23日に購入した。

年末に何か大きな支出をした場合は「いつ使うものなのか」を必ずチェックしておくといいでしょう。

 

2.領収書に信ぴょう性があるか

いくら口で「これは経費として扱うことが可能なはずだから」といっても、証拠がなければ経費として認められない可能性もあります。重要な証拠として利用できる領収書についても、基本的な考え方を押さえておきましょう。

 

・領収書に記載する必要がある項目

領収書とは、支払いをした事実を証明する目的の書類です。税務上、決まった書式があるわけではありませんが、少なくとも、以下の事項が盛り込まれている必要があります(消費税法第30条9項1号)。

領収書に記載する必要がある事項

・領収書を発行した人(領収した者)

・取引の日付

・取引の目的、内容(但し書き)

・支払われた金額

・領収書を受け取る人(支払いを行った人。宛名)

これらの項目が記載されていれば、証拠として機能します。また、例外として、一定の業種については、宛名がない領収書であっても利用できすることが可能です。

・小売業
・飲食店業
・写真業
・旅行業
・旅客運送業(バス、鉄道、航空会社など)
・駐車場業

スーパーやコンビニなどで買い物をした場合、領収書は別途頼まないと渡してもらえません。そして、通常レシートが渡されるはずですが、購入した内容が詳細に印字されているため、かえって領収書より税務上信ぴょう性が高いと考えられます。そのため、昨今では「領収書ではなく、レシートをもらうようにしてください」という税理士もいるくらいです。

また、店によっては、領収書の宛名を「上様」としたり、但し書きを「お品代」としたりと「いつ、誰が何を買ったのか」がわからない状態で渡してくることがあります。もらわないよりは良いですが、証拠としては弱いので、税務調査に入られた場合、調査官の心証を悪くする可能性があることに注意しましょう。

・領収書に不備があった場合は?

必ず領収書を手に入れられれば問題はありませんが、そうもいかない場合もあります。もちろん、領収書を受け取ったとしても、うっかりして失くしてしまう可能性だってあるでしょう。そういう場合は、代わりになる書類を用意してもらうようにしましょう。例えば、以下ものが利用できます。

交流会、パーティー、新年会・忘年会の参加費 招待状の原本、開催通知メールをプリントアウトしたもの
慶弔金を支出した場合 祝儀袋の表書きをコピーしたもの、結婚式の招待状や会葬御礼の原本
銀行振込で代金を支払った場合 銀行の振込受領書・振込明細書、預金通帳の記録
クレジットカードで代金を支払った場合 商品・サービスを販売した店舗などから受け取るクレジット売上票や利用明細書

※ない場合は、クレジットカード会社から送付される利用明細、請求明細を利用すること

 

また、これらの書類を用意できない場合は、最後の手段として出金伝票を使いましょう。市販の出金伝票(文房具店、オンラインショップ、100円均一ショップなどで入手可能)を利用するか、以下の事項を盛り込んだ「仮払精算書」「立替経費精算書」などを作成しましょう。

・支払いをした日付
・支払先
・支払いの目的・商品やサービスの内容(摘要)
・支払った金額

なお、出金伝票は、不備のある領収書(白紙、領収書の印字が不明瞭、記載内容に誤り・不足があるなど)やその他の書類の証拠能力を高めたい場合にも利用できます。

 

・正しい保存期間を理解しよう

領収書は経費精算、その年の決算が終わったからといって、すぐに捨ててはいけません。正しい保存期間・方法を理解しておきましょう。

まず、保存期間ですが、その事業年度における確定申告書(法人申告書)の提出期限の翌日から7年間です。また、領収書の保存方法ですが、従来は紙媒体での保存が基本でした。しかし、近年では一定の条件のもと、電子データでの領収書の保存も認められてきています。ただし、その取引が電子取引(オンラインショッピングなど、ネット上で発注・契約したもの)か、そうでないかによって扱いが異なるので注意してください。

 

取引の種類 電子取引 それ以外
許容される保存方法 ・領収書をプリントアウトしたもの

・オリジナルの電子データの領収書

・電子計算機出力マイクロフィルム(COM)形式

・オリジナルの紙媒体の領収書(原則)

・領収書をスキャンした電子データ

税務署長による承認 不要 必要(スキャナ保存制度)

 

なお、従来、スキャナ保存を行う場合は

・認定タイムスタンプの導入
・スキャン期限の設定
・解像度の確保

など、一定の条件をクリアすることが求められてきました。しかし、2016年の税制改正により、スマートフォンのカメラで撮影した領収書の写真を保存することも認められるようになるなど、次第に緩和の方向に動いてきています。そのため、当初のコストや労力はかかるかもしれませんが、領収書のペーパーレス保存を視野に、設備や内部体制を整えることを検討する価値は十分にあるでしょう。

 

2.経費で落とせるもの・落とせないものの具体例

経費についての基本的な考え方を理解したところで、実際に経費で落とせるものと落とせないものの具体例について考えてみましょう。

 

1.経費で落とせるもの

主要な項目について、表としてまとめました。

項目 具体例と注意点
消耗品費 文房具やホワイトボードなどの事務用品、デスクやキャビネット、オフィスチェアなどの大型家具、パソコン周辺機器、少額のパソコンやタブレット

※原則、10万円未満の物品を予定。ただし、10万円以上であっても、使用可能期間が1年未満であれば消耗品として計上可能。

旅費交通費 通勤・営業活動・打ち合わせなどにかかる交通費(電車、バス、タクシー、新幹線、飛行機など)、外回りで自動車を使ったときの駐車料金、出張先での宿泊費

※交通系ICカードを利用した場合、利用履歴から交通機関を利用した区間の料金を特定し、経費として計上する

※トロッコ電車、ケーブルカーなど景色を楽しむ側面が強い交通機関を利用した場合は、交際費(取引先が同行した場合)として計上する

接待交際費 従業員や取引先との打ち合わせでの飲食代、冠婚葬祭での祝金・香典、お中元・お歳暮 

※会食の場合、1人あたりの食事代が5,000円以下の場合は「会議費」として計上

※領収書とともに、参加者について記載したメモを保存すること

会議費 会議や打ち合わせでの施設使用料、弁当代、飲料代

※領収書とともに、参加者について記載したメモを保存すること

広告宣伝費 広告掲載料、パンフレット・チラシ・ポスター制作費、名刺作成費用、ショーウィンドウの陳列費用 
新聞図書費 事業に必要な新聞・雑誌・書籍の購入費用
福利厚生費 健康診断の費用、残業した従業員の食事代、社員旅行の費用
租税公課 印紙税、登録免許税、自動車重量税、法人事業税、固定資産税、都市計画税、不動産取得税、自動車税・軽自動車税、自動車取得税
寄附金 国または地方公共団体に対する寄附金(震災の義援金など)、指定寄附金(赤い羽根募金など、財務大臣が指定したもの)

※その他の寄付金(認定NPO法人、町内会、政治団体、寺社や宗教法人などへの寄附金)は、損金算入限度額の範囲内でのみ経費計上が可能

諸会費 業界団体の年会費、法人用カードの年会費
地代家賃 事務所・店舗・倉庫・工場・社宅の家賃や礼金、事務所の社用車用の駐車場代
損害保険料 事務所や店舗の火災保険、社用車の自動車保険
修繕費 事務所・店舗の修繕費、社用車・機械設備の保守管理費用・修理費用
水道光熱費 事務所・店舗の電気料金、水道料金、ガス料金
通信費 電話料金、インターネット料金、郵便代(切手・はがき)
荷造運賃 商品の配送料、荷造りひもやガムテープ、梱包材の購入費
支払手数料 銀行の振込手数料、両替手数料 

ここで紹介しきれていない支出であっても、売上を得るために必要と合理的に認められるものであれば、経費で落とす余地はあります。顧問税理士にも確認し、適切に処理しましょう。

 

2.経費で落とせないもの

一方、経費で落とせないものは「売上を得るために合理的に必要とは認められないもの」です。具体例としては、以下のような支出が挙げられます。

 

項目 具体例と注意点
同族会社における会社と経営者の取引 会社の社長が、相場より高い賃料で家族が所有する土地を駐車場として借りる、などが具体例として考えられる。故意に損金を増やす手段として悪用されうるため、認められない。
罰金 国税の延滞税や地方税に延滞金、交通違反(スピード違反、駐車違反など)の罰金が該当。経費として認めると、故意に損金を増やす手段として悪用され、公序良俗に反する。

 

・社長自身の個人的な支出は?

個人事業主や従業員数名程度の小規模法人で注意したいのが、社長自身の個人的な支出です。一般的に、個人的な支出は、事業との売上において関係はないので、経費で落とせません。

しかし、実際は

家族で旅行する時の予約の顛末をWeb記事として公開し、そのWeb記事からのアフィリエイトリンクを経由して売上が発生した

など、個人的な支出であったとしても、会社の売上に貢献しているケースがあり得ます。このような場合は、旅行にかかった費用を経費で落とす余地はあるでしょう。何をどこまで経費で落とせるかは、実態に即して判断しないといけないので、顧問税理士と方針をすり合わせたうえで、適切な処理を行うのが基本です。

 

 

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今回は、経費で落とせるかどうかの判断ポイントと、経費で落とせるもの落とせないものを紹介しましたがいかがでしたでしょうか。

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