業務委託契約書で営業代行を依頼したいものの、「契約書って必須?」「成果報酬なら請負契約?」「どんな項目を決めればいい?」と不安に感じていませんか?
営業代行では、業務範囲や成果の定義、報酬条件、営業担当者に与える権限などを曖昧にしたまま進めると、発注者と営業代行会社の認識がずれてトラブルになる可能性があります。
この記事では、営業代行における業務委託契約の基本的な考え方から、請負・準委任の違い、契約時に特に確認したい項目、基本契約と個別契約の使い分け、2026年時点で押さえておきたい法的ポイントまで、発注者の視点でわかりやすく解説します。
契約書の形式だけでなく、「営業代行を依頼する前に何を決めておくべきか」という視点で確認していきましょう。
営業代行を依頼する際は業務委託契約書の締結は必須?
営業代行の契約について、一般に契約の成立自体に「業務委託契約書」という名称の書面が必須とは限りません。
一方で、営業代行では「どこまで営業を任せるのか」「何を成果とするのか」「成果報酬はいつ発生するのか」など、認識がずれるとトラブルになりやすい条件が多くあります。
そのため実務では、契約書や電子契約などを使って、合意した条件を明確に残しておくことをおすすめします。
例えば、次のような認識の違いが起こる可能性があります。
- アポイントを取得すれば成果なのか、実際に商談を実施して初めて成果なのか
- 既存顧客や過去に接触した企業へのアポイントも成果報酬の対象になるのか
- アポイント取得後に先方都合でキャンセルされた場合も料金が発生するのか
- テレアポだけの契約なのか、商談・クロージングまで含むのか
- 契約終了後に成約した案件にも成果報酬が発生するのか
口頭だけで進めると、双方が異なる認識を持ったまま営業活動が始まってしまう可能性があります。
契約書は自社の主張を必ず認めてもらうためのものではありませんが、双方がどのような条件で合意したかを示す重要な資料の一つです。
「契約書を作ること」自体を目的にするのではなく、発注条件を具体的に整理し、双方の認識をそろえることを重視しましょう。
業務委託契約の種類|請負・委任・準委任の違い
「業務委託契約」は、民法上の独立した契約類型の名称ではありません。実際の契約内容によって、請負や委任・準委任などとして整理されます。
営業代行では、特に請負と準委任の違いを理解しておくことが重要です。
| 比較項目 | 請負 | 準委任 |
| 基本的な考え方 | 仕事の完成を目的とする | 一定の業務を遂行することを目的とする |
| 営業代行での考え方 | 契約上、一定の仕事の完成を約束するケースなど | テレアポ・商談・営業戦略立案などの業務遂行を目的とするケースなど |
| 成果報酬 | 設定する場合がある | 設定する場合がある |
| 判断ポイント | 何を「完成」させる義務なのか | どの業務を遂行する義務なのか |
成果報酬だから請負契約とは限らない
営業代行では「成果報酬だから請負契約」と考えてしまいがちですが、報酬体系だけで契約類型が決まるわけではありません。
例えば、営業活動そのものを継続して行うことを委託し、成果が出た場合に追加報酬を支払う契約も考えられます。
国税庁も、民法648条の2に規定される委任事務の履行による成果に対して報酬を支払う契約は、それだけで請負に該当するものではないと説明しています。
そのため、固定報酬か成果報酬か、アポイント数に応じて料金を支払うかだけを見るのではなく、営業代行会社が契約上どのような義務を負っているのかを確認することが重要です。
参考:国税庁「請負の意義」
委任と準委任の違い
委任は法律行為を他者へ委託する契約で、準委任は法律行為ではない事務を委託する契約です。
営業活動や営業戦略の設計など、仕事の完成ではなく一定の業務を遂行することを目的とする場合は、準委任として設計されることがあります。
ただし、契約書に「準委任」と記載すれば必ずそのように扱われるわけではありません。契約内容や実際の業務内容を踏まえて整理する必要があります。
営業代行の業務委託契約で特に決めておきたい8項目
一般的な業務委託契約書には、契約期間、報酬、秘密保持、解除、損害賠償などの条項があります。
営業代行では、それに加えて次の8項目を具体化しておくと、発注後の認識のズレを防ぎやすくなります。
1.営業対象と業務範囲
最初に、「誰に対して、何を、どこまで営業するのか」を明確にします。
- 営業対象となる業種・企業規模・エリア
- テレアポのみか、メール営業も行うか
- 訪問営業・オンライン商談まで任せるか
- 商談後の追客まで対応するか
- クロージングまで代行するか
「営業代行一式」のような曖昧な記載ではなく、実際の営業工程に沿って整理した方が認識のズレを防ぎやすくなります。
2.成果の定義
成果報酬型では特に重要な項目です。
例えば「アポイント1件」といっても、担当者と日程調整できれば成立するのか、決裁権者との商談だけを成果とするのか、実際に商談が実施されて初めて成果とするのかで意味が大きく変わります。
成果条件はできるだけ具体的に決めておきましょう。
3.既存顧客・重複リードの扱い
営業代行会社が取得したアポイントが、すでに自社で接触していた企業だったというケースもあります。
- 既存顧客
- 過去の商談先
- 自社ですでにアプローチ中の企業
- 別の営業代行会社が開拓した企業
こうした企業を成果報酬の対象にするか、あらかじめ決めておくとトラブルを防ぎやすくなります。
4.キャンセル・無効アポイントの扱い
アポイント取得後に、相手企業からキャンセルされた、対象条件を満たしていなかった、営業内容を十分理解していない相手だった、といったケースも考えられます。
どのような場合に成果報酬が発生し、どのような場合は対象外になるのかを確認しておきましょう。
5.営業代行会社に与える権限
営業担当者が顧客へどこまで約束できるのかも重要です。
- 商品・サービスの説明
- 価格の提示
- 値引き
- 契約条件の変更
- 契約締結
営業代行会社が独自に判断できる範囲と、発注者の承認が必要な範囲を分けておきます。
特に価格や契約条件を営業担当者が独自に変更できる状態は、後のトラブルにつながりやすいため注意が必要です。
6.活動報告とKPI
営業代行は、最終成果だけでなく活動過程も確認できるようにしておくと改善しやすくなります。
- 架電数
- 接触数
- アポイント数
- 商談数
- 断られた理由
- ターゲット別の反応
- 活動報告の頻度
どの情報を、どの頻度で共有してもらうか事前に決めておきましょう。
7.顧客情報・営業データの扱い
営業代行では、顧客リスト、担当者情報、商談内容、CRMデータなどを外部企業と共有する場合があります。
どの情報を共有するか、どのように管理するか、第三者へ再提供できるか、契約終了後に返却・削除するかなどを確認しておきます。
8.契約終了後の成果報酬
契約期間中に営業代行会社が開拓した企業が、契約終了後に成約するケースもあります。
契約終了後何か月まで成果報酬の対象とするのか、どの営業活動を起点として成果と判断するのかなどを決めていないと、後から報酬を巡って認識が分かれる可能性があります。
成果報酬型の営業代行では、契約終了後の取り扱いまで確認しておきましょう。
基本契約と個別契約はどう使い分ける?
営業代行の契約では、1つの業務委託契約書に必要な条件をまとめる方法もあれば、「基本契約」と「個別契約・発注書」などに分けて管理する方法もあります。
基本契約と個別契約の両方を必ず締結しなければならないわけではありません。
複数案件を継続して依頼する場合などは、共通事項を基本契約にまとめ、案件ごとに変わる条件を個別契約や発注書で定めると管理しやすくなります。
基本契約に入れやすい内容
- 秘密保持
- 契約期間
- 再委託
- 損害賠償
- 契約解除
- 顧客情報の取り扱い
- 一般的な報告ルール
個別契約・発注書に入れやすい内容
- 対象商品・サービス
- 営業対象
- 営業方法
- 稼働期間
- 報酬
- 成果条件
- KPI
基本契約と個別契約の優先順位も明記する
基本契約と個別契約の両方を使う場合、内容が矛盾したときにどちらを優先するかを契約内で明確にしておくことが重要です。
「基本契約が必ず優先」「個別契約が必ず優先」という一律のルールで考えるのではなく、自社の契約設計に合わせて優先順位を定めましょう。
営業代行契約書のテンプレートは使える?
業務委託契約書のテンプレートは、契約項目を確認するための参考として利用できます。
ただし、一般的な業務委託契約書には、営業代行特有の条件が十分に含まれていない場合があります。
特に、次の項目はテンプレートをそのまま使うだけでは不足していないか確認しましょう。
- アポイントの成果条件
- 既存顧客・重複リードの扱い
- キャンセル・無効アポイントの扱い
- 営業担当者の権限
- 顧客リスト・CRMデータの取り扱い
- 契約終了後の成果報酬
テンプレートをそのまま使用するのではなく、「今回依頼する営業活動で実際に起こりそうなケース」を想定して、不足項目を確認することが大切です。
厚生労働省が公開している業務委託契約の参考例も、一般的な確認材料の一つとして参照できます。ただし営業代行専用の契約書ではないため、自社の依頼内容に合わせて確認してください。
参考:厚生労働省「契約書の参考例」
契約内容の判断に不安がある場合は専門家へ確認
契約内容によっては、責任範囲や成果条件、法令の適用などについて専門的な判断が必要になることがあります。
特に高額な契約、成果報酬条件が複雑な契約、顧客情報の取り扱いが重要な契約などで不安がある場合は、必要に応じて弁護士などの専門家へ確認することも検討しましょう。
個別の契約内容や法的リスクについて判断が必要な場合は、業務内容に応じた専門家へ相談してください。
契約時に確認しておきたい法律上のポイント
営業代行契約では、取引相手や業務の実態によって関連する法律が異なります。ここでは、発注者が最低限知っておきたいポイントだけ確認します。
フリーランス法の対象となる場合
営業業務を個人事業主や、一定の要件を満たす一人法人などへ委託する場合、フリーランス法の対象となる可能性があります。
対象となる取引では、業務委託をした際に、業務内容や報酬額、支払期日などの取引条件を直ちに書面またはメール・SNSのメッセージなどの電磁的方法で明示する必要があります。
必ずしも「業務委託契約書」という名称の書類である必要はありませんが、口頭だけで済ませることはできません。また、契約書を締結していても、必要な明示事項がすべて記載されていなければ不十分な場合があります。
参考:公正取引委員会「フリーランス法特設サイト」
取適法は営業代行を外注すれば必ず適用されるわけではない
2026年1月から、従来の下請法は改正され、中小受託取引適正化法(取適法)が施行されています。
取適法の「役務提供委託」は、事業者が他者へ提供する役務の全部または一部を別の事業者へ委託する取引などが対象です。
一方、公正取引委員会は、事業者が自ら用いる役務を他の事業者へ委託することは、同法上の「役務提供委託」には該当しないと説明しています。
そのため、自社の営業活動のために営業代行サービスを利用する取引が、営業代行という理由だけで当然に取適法の「役務提供委託」に該当するわけではありません。
ただし、実際の取引が同法の対象になるかは取引内容や委託関係によって異なるため、必要に応じて個別に確認しましょう。
参考:公正取引委員会「よくある質問コーナー(取適法)」
個人へ業務委託する場合は実際の働かせ方にも注意
契約書に「業務委託」と書いてあれば、必ず労働者ではないと判断されるわけではありません。
厚生労働省は、労働者性について、労働が他人の指揮監督下で行われているか、報酬がその労働の対価として支払われているかなどを踏まえ、契約の形式や名称だけでなく実態から総合的に判断するとしています。
特に個人の営業人材へ業務委託する場合は、契約名称だけでなく実際の働かせ方にも注意しましょう。
通常の営業代行会社へ外注するケースと、個人を自社社員に近い形で働かせるケースは分けて考える必要があります。
参考:厚生労働省「労働基準法における「労働者」とは」
営業代行会社と契約する前のチェックリスト
契約締結前に、最低限次の項目を確認しておきましょう。
- 営業対象となる企業・業種・エリアは明確か
- どこまでの営業工程を依頼するか決まっているか
- アポイント・商談・成約など「成果」の定義は明確か
- 既存顧客や重複リードの扱いを決めているか
- キャンセル・無効アポイントの扱いを確認したか
- 営業担当者が価格や契約条件を変更できる範囲を決めたか
- 報酬額・支払条件・追加費用を確認したか
- 営業活動の報告方法・頻度を決めたか
- 顧客情報や営業データの管理方法を確認したか
- 再委託の可否を確認したか
- 契約期間・更新・解約条件を確認したか
- 契約終了後の成果報酬の扱いを確認したか
すべての営業代行契約で同じ条件が必要になるわけではありません。
自社が依頼する営業内容に合わせて、トラブルになりそうなポイントを先回りして明文化することが重要です。
まとめ|営業代行契約では「成果・範囲・権限」を明確にしよう
営業代行の契約について、一般に「業務委託契約書」という名称の書面がなければ契約が成立しないとは限りません。
ただし、営業代行では業務範囲や成果の定義、報酬条件などについて認識の違いが生まれやすいため、契約書や電子契約などで合意内容を明確に残しておくことをおすすめします。
特に確認したいのは、何を成果とするか、どこまで営業を任せるか、営業代行会社にどこまで権限を与えるか、顧客情報をどう扱うか、契約終了後の成果をどう扱うか、といった営業代行特有の条件です。
テンプレートだけに頼らず、自社の営業活動に合わせて契約内容を確認しましょう。
営業代行会社によって、対応できる営業工程や料金体系は異なります。自社の依頼範囲や予算に合う営業代行会社を比較したい場合は、コンペルへお気軽にご相談ください。
※本記事は営業代行契約に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の契約や取引に関する法的助言を行うものではありません。
この記事の監修者
鶴田克之
株式会社ジャパンプ取締役
営業歴20年以上。様々な業界の営業代行を担当し、
楽天やミスミなど大手企業の営業支援も経験。
新規開拓に加え、営業チームの立ち上げ・マネジメントにも携わる。
営業代行の発注設計と会社選定(相場・依頼範囲)に関する内容を監修。
岡林洋祐
株式会社ジャパンプ取締役
営業歴15年以上。様々な業界の営業代行を担当。
リクルートやキーエンスなど大手企業の営業支援も経験。
スクリプト改善や架電運用の最適化など、現場で成果を出す実務に強みを持つ。
営業代行で成果を出すための運用設計(品質管理・改善・教育)に関する内容を監修。

