STPとは、企業のマーケティング戦略を策定するために用いられるフレームワークの1つです。自社の商品・サービスが市場の中でどのようなポジションをとるべきかを考えるために、Segmentation(セグメンテーション)、Targeting(ターゲティング)、Positioning(ポジショニング)の3つの観点から分析するフレームワークです。

セグメンテーションで市場全体を把握して、ターゲティングで狙う市場と進出方法を特定して、ポジショニングで他社が満たしていないポジションを埋めるという流れで分析が進められます。GMの社長であるアルフレッド・スローンにより提唱されたセグメンテーション理論をきっかけとして、フィリップ・コトラーが完成させた理論です。

マーケティング戦略策定は、「環境分析→戦略立案→具体的な行動計画」というステップで行われ、STP分析はその中の「戦略立案」を行うために用いられます。

具体的な分析内容

Segmentation(セグメンテーション)

市場全体を顧客の属性や購入パターン、ニーズなどで細かく分けます。製品を利用してもらいたい、狙いたいユーザーを明確にするために重要です。

分析項目としては以下のようなものがあります。

消費財市場(BtoC)
・地理的変数   国・都道府県・気候・文化・生活習慣・発展度など
・人口動態変数  年齢・性別・家族構成・職業・年収・最終学歴など
・心理的変数  ライフスタイル・性格・好み・社会階層など
・行動変数  購買状況・製品に対する知識・購買パターン・使用頻度・利用経験・ロイヤリティなど

生産財市場(BtoB)
・オペレーティング変数  使用頻度・利用状況など。
・購買方法  購買方針・購買基準など。
・購買に絡む状況要因  緊急性・受注量・汎用性(カスタマイズの有無)など。
・購買者の特性  決済権の有無など。

Targeting(ターゲティング)

セグメンテーションの中から特に狙う市場を選びます。
市場に進出するパターンとしては、主に以下の3つの方法があります。

◆非差別化
1つの製品を複数のセグメントに提供する方法です。同じ製品を大量生産することで製造コストを抑えられるぶん、差別化や細かいニーズへの対応は難しくなります。

◆差別化
複数のセグメントに、それぞれ異なる製品を提供する方法です。細かいニーズに丁寧に対応できるぶん、製造コストは高くなります。

◆集中化
あるセグメントに特化する方法です。規模や利益は少ないものの、大手企業が狙わないセグメントなどに進出して、シェアや専門性を高めるという戦略です。企業規模が小さい企業がニッチな市場を目指すアプローチがこれに当たります。

Positioning(ポジショニング)

ターゲティングで決定した市場において、他社が満たしていないポジションを分析します。現在空いているポジションに進出することで、競争の回避や自社独自の価値の明確化が可能になります。
具体的に以下の手順で行います。

①製品の特長を洗いだす
自社の製品の特長を2つ以上考えます。顧客が商品を買うための決定打である購買決定要因(Key Buying Factor)は何かという視点も考慮しながら特長を洗い出します。

②ポジショニングマップの作成
特長をもとに2軸のポジショニングマップを作成し、空いているポジションを狙います。

 

分析の注意ポイント

STP分析においては分析できるデータが大量にあるため、時間がかかってしまいがちです。特に以下の6つの視点(6R)を考慮すると、効率よく分析を進められます。

Rank(優先順位)
複数の市場の中でも特に優先するものを選ぶという視点です。

Realistic(規模の有効性)
その市場を狙ったとして、利益を得られそうかという視点です。

Reach(到達可能性)
その市場の顧客に商品やサービスを実際に届けられそうかという視点です。物流や広告なども含みます。

Response(測定可能性)
その分析の基準が客観的に測定・判断できるかという視点です。例えば読書が好きな人であれば、週何回読むか、月にいくら購入するかなどに分解して考えるようにすることです。

Rate of growth(成長率)
その市場はこれから成長しそうかという視点です。

Rival(競合)
その市場ですでに強力な企業がいないかという視点です。

 

STP分析の実例

ここではSTP分析の実例として、マクドナルドを取り上げて説明します。

Segmentation
・学生やサラリーマンなどの、若い層
・通勤や帰り道に寄って食事をしたい人

Targeting
・24時間営業や持ち帰り、配達など、どの地域・時間帯にも提供できる体制
・ハッピーセットやおもちゃなど、子供づれの客が来店したくなるサービス

Positioning
・低価格、スピーディーな商品の提供

 

 

【STP】

読み方:えすてぃーぴー

英語:STP

例文
(1)STP分析はマーケティング戦略における基本的なフレームワークです。
(2)STPなどの分析だけに時間をとられすぎないように注意しましょう。

 

 

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